3Dプリンターを使った造形は、どちらかというと、透明というよりは、光透過性があるくらいのイメージだと思う。実際にランプシェードなどで、使われている用例はあるが、透明な、光学部品を3Dプリンターで、印刷するというイメージは、あまり思いつかない。
FDMタイプの3Dプリンター
PrusaがFDMプリンターで、レンズを作る実験をしている。ポイントは、充填密度と素出力後の研磨処理だ。
今回は、ABS、PETG、PLA、3種類の素材で、レンズのプリントを試みている。ABSで充填密度100%でレンズを造形すると、バリだらけで、最初は透明感すらない汚い小石のようだ。が、まずは、バリをクラフトナイフで削り取り、水と耐水ペーパーを使って徐々に研磨をしていき、最後にラッカーでクリアコートをすると、ある程度の光学的性能を持ったレンズができるらしい。
もちろん、透明度や、光学的な精密さとは程遠いが、一応光学的レンズの特性を持ったものができる。ABSで作ったレンズのような物をアセトンでクリーニングすると、表面はきれいに仕上がるが、中身が白く濁ってしまって、光学的な性能はなくなってしまう。
ABSとPETGは、良好な結果が得られるようだが、PLAはいつも曇ってしまうようなので、光学的性能を持たすことはできないようだ。
PETGは、一番透明度が高いクリアなレンズが出来そうな気がしたが、フリント時の管理がシビアなようだ。そのような訳もあって、ABSは、トータルな意味で一番のようだ。まあ、自分で追って、実験してみたいと思う。
SLAタイプの3Dプリンター
SLAタイプのプリンターは、もともと透明な造形物の出力にたけているので、おおむね良好な光学レンズ特性が得られるようである。レンズ部は、シェルがあって中空構造にするのではなく、FDMと同様に100%充填の設定にし、造形物内に液体のままのレジンが残留しないようにすることはもちろんだが、造形後に耐水ペーパーで研磨作業を行うことも同様だ。
スライサーの設定
光学的部品用に積層パターン、充填パターンに工夫する余地もありそうだ。積層時の小さな隙間が、気泡となり、最終的に、曇りや濁りになってしまう。プリントスピードもマテリアルによって、細かく調整が必要とのこと。100%充填で光学部品を作ると経済的に折り合うかどうか、という根本的な問題もあるが、FDMタイプの3Dプリンターでも、光学部品を作ることは可能だということだ。
光学部品の精度を補う技術
最近では、光学的なひずみを方程式で補正できてしまうアプローチも出現した。
Goodbye Aberration: Physicist Solves 2,000-Year-Old Optical Problem
https://petapixel.com/2019/07/05/goodbye-aberration-physicist-solves-2000-year-old-optical-problem/
3Dプリンターの応用の可能性が広がるが、やはり透明度・明るさで、蛍石レンズをしのぐことは遠い未来ですね。