FDMプリンターのノズル交換によって得られるメリットやデメリットを前回書きましたが、ノズルのオリフィス径を小さくすると一般的に造形精度が向上します。最も一般的なオリフィス径は0.4mmです。
標準の0.4mm径オリフィス
多くのプリンターで標準的に使われているノズルで、繊細な造形も、ラフな造形も無難にこなし、印刷時間もまあ、遅いとはいえ実用範囲に入る選択です。どんな素材を使っても、特にトラブルが起きない、きわめて妥当なオリフィス径と言えるでしょう。そのため、実は、FDMプリンターのホットエンドや、フィラメントの押し出し機構は0.4mmに最適化されて作られているといっても過言ではありません。
0.25mmや0.1mmの微細径オリフィスノズル
市場には微細ノズルも多く売られており、FDMでSLA並みのディテールを求めるプロトタイプを作るのであれば、レジンの扱いを必要としない微細ノズルもありだと考える人も多いと思います。特に小さなギアなど微細でありながら機械的な強度が必要な際に便利です。
しかし、実は、この微細オリフィスノズルを使うにはノズル変更だけでは期待に添わない結果になります。
その理由は、先に述べたように多くのFDM機は0.4mmオリフィス径に最適化されているからです。
フローレートとは
フローレートとは1秒に何立方㎣の溶解したフィラメントを吐出できるかということで
flowrate㎣/S=スピードmm/s×ノズルのオリフィス径mm×レイアーハイトmm
という式で表すことができます。大抵の場合.0.4mmオリフィスでレイアーハイトが0.15mmだと15-20㎣/Sが実用限度となります。それ以上フローレートを上げても、フィラメントの溶解が追い付かず、ノズルからの吐出に息継ぎが生じるようになってきて、いくら強力な押し出し機を用いてもフローレートが上がりません。微細ノズルともなると些細な原因でノズルが詰まってしまう場合もあるほか、0.4mm径ノズルと同じ設定で造形すると、著しく高いフローレートを設定している状態になり、ノズル詰りに無駄な時間を割くことになります。
微細オリフィスノズルはとにかくスピードを落とせ。
0.4mmノズルで最も実用的なフローレートは15から20㎣/Sです。
0.4mm径ノズルでレイアーハイトが0.15の状態でフローレート15㎣/Sを達成するには、
送りスピードは、4.17mm/s Gcodeで設定する場合は250mm/mとなります。
それに対し、0.1mmの微細ノズルを使用した場合、フローレート15㎣/Sを実現するには、上記の式に当てはめると、レイアーハイトを0.05と設定した場合、送りスピードは
0.075mm/s、Gcodeで設定する場合は45mm/mとなります。0.4㎜径に比べ送りスピードをかなり低くする必要があることが解ります。
この様に、0.4mmオリフィス径で最適化されている多くのFDM機では素材の送りスピードをとにかく落として、0.4mmオリフィス用に設計されたホットエンド、押し出し機をノズルのオリフィス径に合わせて調整する必要があるのです。
0.1mmオリフィスの微細ノズル(カイカへのリンク)