3Dプリンターと新型コロナウイルス

イタリアのパオラピサーノ技術革新大臣がTwitterで共有した、3Dプリンターで”印刷した”医療用バルブを紹介しています。

イタリアのパオラピサーノ技術革新大臣 Twitter より

新型肺炎の世界的なまん延によって、医療用機器の供給が滞っているようです。世界中で、国境を封鎖し、物流が物理的に遮断された状況で、イタリアで医療用バルブを3Dプリンターで印刷して、調達したことがわかりました。3Dプリンターは、もはや教育、プロトタイプの為ではなく、必要な時に必要なタイミングで、合理的に生産できる実用手段になりました。

大量生産と3Dプリンター

金型を使用する射出成型品は、金型の投資を回収するために大量生産を強いられます。そのため、需要と供給がマッチしなかった場合は、大量の無駄が生じます。

また、医療用品は、今回のパンデミックの様な爆発的需要に、常に備えているわけではなく価格の安定化を図る為にも必要以上の在庫を持ちません。

病院の平時のサプライヤーは、激増した患者を治療するのに十分なバルブを作ることができなかったとのこと。

これに対して、イタリアの有志ボランティアが、独自に医療バルブを計測し、複数の種類のバルブを3Dプリンターで印刷したようです。

医療用バルブは通常、医療機器メーカーから取得すると、約11,000ドルかかりますが、ボランティアは約1ドルでレプリカを印刷することができました。

知的財産権

この様な、世界的緊急事態の状況で、オリジナルの製造元は、特許侵害に抵触する恐れがあることを理由にCADデータの提供を辞退したらしいですが、実物を計測し、忠実に再現できることを実証してしまった今回の件は、3DCADソフトや3Dプリンターの実用性を十分に証明したと思います。

誰もが、3DCADソフトさえあれば、きわめて高い専門知識を必要とされる、医療用の機器なども、簡単に現場で調達できることが実証されました。また、緊急時に特許などの知的財産権が、どれほど守られるか?という新しい課題も見えてきました。

海外で見た物や写真を基に、パクリ品を作る従来の概念とは、次元の全く違う複製品について、社会がどのようなルールを作って、受け入れていくのかも、大変興味深い問題です。

医療用バルブを製造していたメーカーは、命を救うコロナウイルス治療に使用されるバルブを、3Dプリントしたとして、イタリアのボランティアグループを訴えるとのこと。

産業革命

大量生産を前提とした製造工場の衰退、部品の組み立てが必要ない設計、最終成果物を、最終消費地で製造するために、包装も不要となります。また、大規模な物流網を常に維持する必要がなくなるなど、現代の製造業の在り方を根本的に覆すポテンシャルが、ついに可視化され始めたと言えるのではないでしょうか。

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