3Dプリンターで使うデジタル3Dモデルは、どんなに滑らかに見えても、元々ポリゴンメッシュで出来た、張りぼての提灯の様なものだ。それを実際に印刷する過程で、スライサーという、中間処理のためのソフトを使う。
立体物の表面だけを作ろうとしても、自重で、その形を維持できないかもしれないし、
維持できたとしても、中身がスカスカの張り子では、機械の一部の部品として使うことはできない。
現在は、3Dプリンターで作った造形物を、ただ、製品サンプルや、教育のために使う需要は終わって、既に、実用の部品を必要な時に必要なだけ作る、本当の実用段階に入ったのでは?と思う。
今回の様な、世界的疫病が発生した場合、例えば機械の重要な機能部品が、急遽必要になった場合、暫定的にでも、その機能を維持する部品がリモートで制作できる意義は高い。
3Dプリンターの効率
張り子のモデルを、ただ作るだけのために、中身が100%詰まった造形を行うのは、フィラメントの無駄ずかいだ。また、その中身を100%の密度で充填するために、プリンターは、より長いプリントアウト時間を必要とする。家庭で使われる3Dプリンターの代表であるFDM方式は、10時間以上もノズル,ヒーテッドベッッドを加熱し続け、下手をすると、Bitcoinのマイニング並みに電気を消費することになる。
そこで重要になるのが、充填密度と充填パターンだ。この設定は、スライサーソフトの性能によるところが大きい。最近の3DCADソフト、Fusion360のアップデートでこの機能が追加されたが、無償ライセンスでここまで使わせていただけるのだろうか??と思うほど充実した内容となっているのがうれしい。
充填密度 infill density
張り子状態では、造形物の実用強度が足りないために、スカスカでも、最低限の要求高度に耐えるために、3Dモデルの中身を、満たす必要がある。密度を低くするほど、フィラメントの使用量も少なくすることができ、3Dプリント時間も、短縮することができる。
安い3Dプリンターでは、印刷作業中に停電などで電源が遮断されると、プリントしていた造形物が、ダメになってしまうこともあるので注意が必要だ。そのようなプリンターでは、造形スピードの速さも、ことさら重要だ。
しかし、ただ密度を低くするだけでは、造形物に求められる、部品としての、機械的な剛性が、満たせないこともある。人間の骨と一緒である。
充填パターン infill pattern
充填パターンは、3Dモデルの造形後に要求される剛性に直接かかわる重要な要素だ。また、このパターンによっても、たとえ低密度にしても印刷時間が変わってくるので、造形物が、どのような目的で使われるのかを十分に考慮した充填パターンを選択する必要がある。
Tie fighter infill
3月11日にアップデートしたFusion360で、新たに採用されたinfillパターン、通称Tie fighter infillは、ねじり剛性に強い、実用を強く意識した、充填パターンのようだ。