用語集・前編もご覧ください
私が、以前著作のためにまとめた、ドローンに関する用語集です。ホビイストドローン用ではなく、主に産業用sUAS用に作ったものだが、ホビイスト用 自作FPV機でも、安全に飛行させるために。知っておきたい用語を中心に引用し、特に、自作FPV機で重要な部分は、加筆させていただく。前編も併せてご参照ください。
キャリブレーション (定義)
UAVに搭載されている各センサーが正しく動作するための補正手順。
ギンバル (名称)
光学センサー(カメラ)などを常に能動的に一定の対象に向けるための懸架装置。
ホビイストドローンでは、コントローラーのスティック保持機構もギンバルと呼ぶ。
ギンバル自由度 (定義)
パン・チルトコントロールのできるギンバルの自由度は2、加えてロールコントロールが出来るギンバルの自由度は3となる。
現場オリエンテーション (定義)
UAVを用いた生態調査や、測量、災害探査などで最も重要な工程。探査範囲の地形や障害物、環境などを見極めどこから離陸し、どのようなフライトパスでどれくらいの高度からスキャンを行うかを立案する情報を収集すること。
コアレスDCモーター (名称)
モーター内の回転子の質量が軽く、コントロールレスポンスが良い。ブラシドモーターの一種である。
コーディネーション (定義)
緯度、経度情報。ウェイポイントや、ぺリメーター、No Fly Zoneを直接指定することも可能。
固定ピッチ(機構) (機能)
あらかじめ固定されたピッチを持つプロペラを使い、モーターの回転数で推力の調整を行う仕組み。自作FPV機では、好みの飛行を実現するプロペラを選ぶことも、楽しみの一つ
コレクテイブピッチ (機能)
伝統的なメインローターを持つヘリコプター型のVTOL機でスワッシュプレートとミキシングアームから成るピッチ変更リンク機構を用いてメインローターのピッチを変化させる機構。サイクリックピッチコントロールとの同時操作が可能である。ローターピッチをマイナスにすることによって、背面ホバリングなどマニューバビリテイの向上に寄与するが、複雑な機構のため機械的な信頼性に劣る。
サーキュラーポーラライズドアンテナ (名称)
ホイップアンテナの短所を補うべく、電波を立体的に発射することが出来る。空中線は球形に形成されるオムニディレクショナルアンテナ。
サイクリックピッチ (機能)
伝統的なメインローターを持つヘリコプター型のVTOL機でスワッシュプレートとミキシングアームから成るピッチ変更リンク機構を用いてローターピッチを周期的に変更することによって推力をピッチ方向・ロール方向に連続的に推移させる機構。複雑な機構のため機械的な信頼性に劣る。
システムへのオーバーライド (定義)
ミッションアボートやkill指令など、最重要判断はシステムに対して優越し、人間が必ず行える重要な仕様。
周波数 (定義)
電磁波の振幅のサイクル。300万メガヘルツ以上は光となる。sUASシステムで主に用いられるのは、900mhz、1.2Ghz,2.4Ghz、5.8Ghz。周波数が高くなればなるほどデーター転送量が増える反面障害物に弱くなる。
シリーズ接続 (定義)
バッテリーの接続形態を示す。Seriesは直列接続を意味する。 例)3S=バッテリー3cellを直列の意味。電圧は3.7V×直列数となるが電流は変わらない。
スウェリング (状態)
複数のcellを組み合わせて作ったバッテリーパックで、他のcellに比べてコンデイションの悪い(化学電池なので個体差がある)個体のcell内で可燃性ガスが発生して膨らむこと。1つでもスウェリングを起こしているバッテリーパックは、即使用を停止し、廃棄手順、ならびに自治体の廃棄物処理のルールに従って廃棄処分する。
スティックアサインメント(mode1) (定義)
主に日本で主流のステイックアサインメント。特に右ステイックにスロットルとロールという全く別系統の制御が割り当てられており、極めて非合理的な混乱を招く割り当てである。
スティックアサインメント(mode2) (定義)
世界で主流のスティックアサインメント。人間工学的に適切な制御の割り当てが行われているため、スキル習得時間を短縮させる効果が実証されている。産業用UAVは操縦することが目的ではないため、mode1に比べ、よりミッションに集中することが出来、オペレーターの操縦ミスによる墜落も少なくすることが期待されている。アメリカのカーチスヤングブラッド氏が発案した右スティックにダイアルをつけ右ステイックで、ピッチ、ロール、ヨーコントロールを行う特殊なタイプも存在する。
セルフチェックシークエンス(機能)
sUASでは、離陸前に自動的にすべてのセンサーのチェック及びGNSS情報の確認を行い、センサーの数値が閾値を超えた場合、離陸することは出来ない。
相対速度 (定義)
UAVが相対的に移動している速度。10m/sの向かい風の中10m/sで進むUAVの相対速度は20m/sであるが対地速度は0m/sである。バッテリーの消費に関わる深刻な判断ミスを起こす原因となる場合がある。
ソニックセンサー (名称)
超音波センサー。対地高度10m以内で、地表との距離を計測するのに用いる。温度の低い場合、雪でpingシグナルが帰ってこない場合や、センサーの凍結が起こる場合がある。
ターンヘリカルアンテナ (名称)
反射板とコイルから生る高利得指向性アンテナ。空中線はアンテナを基点に30度のコーン型となる。
対候性 (定義)
産業用ドローンは全天候型で、飛行自体は天候に左右されない。高放射線地域での飛行はUAV内部を中性子が貫通するため、制御回路全体の信頼性が下がるといわれている。特にカメラの撮像素子などは面積が広く、放射線に対して脆弱である。
自作FPVドローンでは、直流で大電流が流れるため、特にESCが水に対して弱く、コーティング剤などで簡易的な防水処理を行う人もいる。
対地速度 (定義)
UAVが、地表に対して移動する速度。風速があらゆる方向から0m/sだった場合、相対速度と対地速度は一致する。慣性誘導装置が無ければ対地スピードを算出することは出来ない。
チルト (機能)
ギンバルに搭載されたセンサーを垂直方向に調整する機能。
通信の暗号化 (定義)
収集したデータのダウンリンクの際、第三者が簡単に傍受し、データを窃用することを防ぐ目的や、電子的なハイジャックを防ぐための技術。sUASでは既に実装されている。
但し、GNSSシステムからの時間と位置座標情報は、暗号化、暗号解読化するためのレイテンシーが、位置情報精度そのものを低下させるので、セキュリティホールとなっている。偽GNSS位置情報を使って、アメリカの軍事UAVをイランが無傷で、鹵獲した例がある。
テレメトリー (機能)
UAV(飛翔体)の飛行中の姿勢情報、バッテリー電圧、RSSI情報などを、リアルタイムにオペレーターに通知する機能。
電波の質 (定義)
電波の質とは、電波法により 1、電波の周波数の偏差 2、占有周波数帯域 3、スプリアス発射の強度が総務省法令に定めるものに適合しなければならない。
電波法 (法規)
電波の公平且つ能率的な利用を確保することによって、公共の福祉を増進すること を目的にした法律。
ドローン (定義)
近年、遊興そのものを目的とするラジコンに加え、マルチコプターも加えてドローンと総称される。本来は軍事用の無人標的機や偵察機を指す。
バーチャルコッックピッド (定義)
UAVコントロールインターフェイスの一つ。実機に模したGUIを用いてUAVをコントロールする。
バインド (機能)
UAVとコントローラーを組み合わせる操作。原則的にはバインド後、バインドしたコントローラー以外の操作信号をUAVが受け付けない。
パッチアンテナ (名称)
2.4Ghz帯や5.8Ghz帯で効率の良い平面アンテナ。比較的新しい高利得アンテナ。アンテナの裏側に空中線が出来ないことに注意。
バッテリーの定格容量(定義)
mAh単位で表示される。飛行可能時間の目安になる他、表示されたCレートにより 最大放電電流を算出する基準値ともなる
パラレル接続 (定義)
バッテリーの接続形態を示す。Parallelは並列接続を意味する。 例)2P=バッテリー2cellを並列の意味。電圧は変わらないが電流は定格電流×並列数となる。
バロメーター (名称)
気圧高度計。離陸した場所からの対地高度を検出するために用いる。ダウンバーストや下降中の精度は低下する。気圧は、温度や密度によって変化するので、厳密な大気圧を図るにはそれを補正する仕組みが必要で、ドローンなどでは、補正を行わない相対値が使われる
パン (機能)
ギンバルに搭載されたセンサーを水平方向に調整する機能。
飛行可能時間の論理値 (定義)
完全な無風状態で且つ、標準大気圧で、気温25度での飛行可能な時間。実際には風が強かったり、高温多湿によるプロペラ効率の低下、低温度によりバッテリーの定格容量が使えないなど、現実では不可能なカタログスペック上の値。
飛行許可申請 (法規)
航空法第132条ただし書及び第132条の2ただし書の規定により無人航空機を飛行させるものに対し国土交通大臣が発行する飛行許可・承認書を取得するための申請手続き。
ピッチ (機能)
UAVの進行方向に対する機首上げ機種下げの動作。
ファームウェア (名称)
フライトコントローラーのポテンシャルを十分に発揮させるために、主にフライトコントローラーの製造メーカーより供給されるが、サイバー攻撃の新たなターゲットともなっている。不正なファームウェアは、電子的ハイジャックや、オーダー66を起こす原因となる為、オペレーターはファームウェアの信頼性に常に最新の注意を払い、ファームウェアをアップデートしなければならない。
フェールセーフ (機能)
機体とオペレーター間の通信が途切れた場合など、自動的に起動される緊急シークエンス。広義では致命的な問題が起こった場合にその問題が拡大しない構造的な設計、あるいは冗長性も含まれる。
フライトモード (定義)
フライトコントローラーがどれだけオペレーターの入力に対して介入するのかの閾値を変更する機能。モードの呼称は機種によって異なる。
ブラシレスDCモーター (名称)
直流モーターであるがコミュテーターとブラシによる擦動部分が無く、ESCによってタイミングよくスイッチングを繰り返すことによって連続回転を行う。磨耗部品が無いため、安定した性能が発揮される。UAVに使われるモーターはホール素子を使わないセンサーレスタイプであるため、超低速回転時にはトルクが弱い。
フルインテグレーテッド (定義)
機体の飛行制御と搭載ペイロードのコントロールが完全に統合されたシステムを指し、完全なワンマンオペレーションが可能なsUASといえる。
フルデジタル (定義)
機体のコントロールや、取得情報のアップリンク・ダウンリンクをすべてデジタルで行う仕組み。通信の暗号化や妨害電波に強いメリットがあるが、UAV本体も高いデータ処理能力が必要となる。
フレズネルゾーン (概念)
送信アンテナと受信アンテナ間に出来る空中線の形。フットボールのような形をしている電波の搬送ゾーン。このゾーンが地面などの導電体に触れると電波到達距離が減衰する。現場オリエンテーション時に注意。
プロップガード (名称)
プロペラの接触による損傷を防ぐための物理的バンパー。装着することで対風性やプロペラ効率が低下する。FCが定義した、機体重心に対して、推力重心よりも外側に新たな荷重がかかる為、PIDの再調整が必要
プロペラピッチ (定義)
プロペラの回転面に対する迎え角。回転面に対して0度の迎え角の場合推力/揚力は0となる。モーターのKV値やバッテリーの電圧によって適切なピッチを持ったプロペラが使われている。
ペイロード (定義)
UAVに搭載するセンサーとそれを懸架するギンバルなどの総称。sUASでは、目的のミッションに応じて、ホットスワップ(電源が入った状態でのペイロード交換)が可能な物が多い。
ベースステーション (定義)
オペレーターへのユーザインターフェイスとUAVを中継する地上ステーション。アンテナトラッカーを搭載する物もある。
ペリメーター (定義)
探査範囲内の、基準点や特徴的な目印などのこと。フライトプランの作成に活用できそうなものを選ぶ。
ホイップアンテナ (名称)
最も一般的で、安価なアンテナ。アンテナに対して平行に電波を発信するため送信機と受信機の位置関係によって効率が落ちる特徴(短所)がある。
マグネティックフィールドセンサー (名称)
地磁気を用いて磁北を検知するためのセンサー。マルチコプター型のUAVは機体オリエンテーションが難しく、どちらが機首かわからなくなることが多いため、磁北情報は重要な情報の一つである。機首方向を決めるためのセンサー。
マップベースコントロール (名称)
UAVの、最も多い墜落原因が、オペレーターの錯覚によるステイック操作ミスに起因することであるため、ステイック操作を最大限排除した地図ベースのコントロールインターフェイス。地図上のUAVを配置したいポイントをタップするだけで、UAVをコントロールすることが出来る。主に産業用や軍事用sUASシステムは、オペレーターの教育時間を短縮できるため、必須のGUI。
マニュアルコントロール (定義)
UAVを見て目視で、機体オリエンテーションを行いジョイステイックを用いて操縦すること。細かいあて舵などはすべてFCがあらかじめ設定した閾値(フライトモード)に基づき、自動的に吸収している。自作FPV機は、操縦することそのものが、娯楽の一部である。
マルチコプター (定義)
複数のローターの推力を制御して飛行するVTOL型UAVのこと。最低3ローターから存在する。現在は4つのローターを持つクワッドコプターが主流。6ローター(ヘキサコプター)や8ローター(オクトコプター)がシステムの冗長性から有利とされていたが、FCに問題があった場合のリスクはローターの数とは無関係であり、寧ろ機構の複雑化、消費電流の多さなどから、多発ローターは次第に時代遅れとなりつつある。
マルチローターブレード (定義)
伝統的なメインローターを持つヘリコプター型のVTOL機で、メインローターの数が4枚や6枚のようなもの。メインローターの直径を小さく出来、ヘリコプター独特の騒音が軽減できる。機首下げのような、独特の癖があるため専用のジャイロスタビライザー機器を搭載し、その、癖を打ち消す必要がある。マルチローターブレード機は、3枚以上のメインローターブレードを持つヘリコプター型のUAVを指す。マルチコプターとは別なものである。
マンパッカブル (定義)
Man packable
システム全体がコンパクトに、収納が可能で人が持ち運ぶことが可能なsUASシステム。
目視外飛行 (概念)
改正航空法(平成26年12月10日施行)によって定義された概念。操作体操物をモニターなどによって裸眼視野の外で、操作することや、操作対象に搭載された一人称カメラ(FPVカメラ)の情報に基づいて飛行させること。
ヨー (機能)
UAVの機首方向を左右に向ける為の動作。
ラジコン (定義)
電波を使ってコントロールする模型。多くの場合は操縦そのものを遊興目的とする。
ロール (機能)
UAVの進行方向に対する左右の傾きに関する動作。