コネクション・ロストを起さないには
FPVドローンは、電波によってコミュニケーションを行っています。このコミュニケーションが切断される状況を作らないために、電波の特徴をよく理解する必要があります。FPVでは、2.4GHz帯と5.8GHz帯が使用されます。
FPVの操縦に関するコミュニケーションは、2.4Ghz帯、ドローンからゴーグルへは、5.8Ghz帯のアナログテレビ基地局を開設することによって画像を、操縦者に転送します。
電波の特性
電波は周波数が高くなるほど情報伝達量を増やせる特性があり、動画の転送に5.8Ghz帯が使われるのは、理にかなっています。逆に、周波数が高い電波は、その特性が光に近くなり、障害物などで簡単に遮蔽されてしまうというデメリットがあります。
2.4GHz/5.8GHz帯は見通し距離という概念が大変重要になります。常に、見通し距離内にドローンの飛行範囲を設定することが重要です。見通し距離と言ってもドローンは、LOSでは操縦者から100mも離れると全く機体オリエンテーションを理解することができません。
特に、サイズの小さい、カーボンの様な素材でできた機体は、背景に溶け込み、機体の前後左右、姿勢を認識することは不可能です。
つまり、操縦には、機体からダウンリンクされるテレメトリー情報や映像情報に高く依存します。そのためにも、コミュニケーションロスを起さないための飛行フィールドの確認が大変重要です。
見通し距離とは、送信機とFPV機の間に障害物が全く無い状態での距離を指します。
フレズネルゾーンの問題
電波到達距離は“見通し距離”という条件と、フレズネルゾーンという、電波の特性を理解しなければなりません。フレズネルゾーンとは送信アンテナとFPV機の受信アンテナ間に発生する電波の搬送ゾーンを指します。フットボールのような形の立体的な電波搬送ゾーンで、もちろん目視することはできません。フレズネルゾーンの半径は周波数が判れば、方程式で求めることができます。
複雑な方程式ですが、こちらの計算サイトを利用することで、簡単に求めることができます。
なぜフレズネルゾーンの半径が重要なのでしょう。それは、フレズネルゾーンが地面や障害物によって欠けた場合、電波到達距離が短くなるためです。
上記のフレズネルゾーン計算サイトによれば、送信機とFPVの離隔が500mの場合2.4GHzで半径が 3.95107797 m、5.8GHzで 3.22523544 mです。また、離隔が離れると、よりフレズネルゾーンの半径にも変化が生じこるとを、念頭において、常に飛行エリアのどこをFPV機が飛んでも、飛行中にフレズネルゾーンが欠けない場所で楽しむことが必須条件です。
使用周波数帯独自の問題
5.8GHzは、主に映像のダウンリンクに使われますが、2.4GHz帯は、IMS帯とも呼ばれ、多くの目的で使用されている周波数帯です。最も身近な例を挙げると、電子レンジも同じ周波数を用いています。このことは、空気中の水分量が多いと想像以上に電波が減衰し、電波到達距離が短くなる可能性を示唆しています。また、地面は導体であるため、フレズネルゾーンを欠けさせる要素です。雨の後で、地面が濡れている状態での低空飛行、水上での低空飛行は、フレズネルゾーンの欠けによる、コネクション・ロストのリスクを十分配慮すべきです。
ホイップアンテナの問題
ホイップアンテナは、多くの場合、標準アンテナとしてプロポに付属しており、アンテナに対し水平方向に電波が送信されます。
その為、アンテナの真上はコネクションロストが容易に起きるポイントが発生します。このポイントをNullポイントと呼びます。RTH機能が搭載されている機体などで自動的に戻ってきた場合、Nullポイントに陥ると、操縦者の安全を脅かす最悪の事態が想定されます。アンテナの向きと機体の飛行方向は大変重要ですので、常に意識するよう心がけてください。
Nullポイントの発生する高さは周波数によって異なりますが、アンテナが直上に向いている場合地上から15mから50mを目安に考えましょう。RSSIが低くなってくるとアンテナを機体に向けがちですが、逆の効果を生むので注意が必要です。
Nullポイントのリスクを避ける方法
アンテナの種類
サーキュラーポーラライズドアンテナを使ったり、パッチアンテナを使うことも可能ですが、前者は周波数の違いで、かなり大きさが異なることや発射電波の位相方向、パッチアンテナは指向性が高いので、アンテナトラッカーを用いる必要があるなど、より専門的な知識が必要となります。多くの場合、VTXからの画像受信用に用います。
飛ばす場所の注意
FPV機では、非常に強い電波射出エリアの近くで飛ばすことはないですが。大きなスピーカーの横で大声で叫んでもすべての声がかき消されてしまうことと同様です。FPV機の他の機器に影響を及ぼしその場で即墜落するリスクもあります。
中継施設などが近くにある場合は、そのアンテナがどちらを向いているかも、十分に注意を払う必要があるでしょう。
高圧送電線
高圧送電線は、電気が流れているので、当然電線の周りに電磁波が発生しています。電力会社の定める対人向けの安全離隔は、50万ボルトで11mとされています。しかし、FPV機のコミュニケーション・ロストを考えた場合、離隔はとり得る限り取るべきです。電波には関係ありませんが、高圧送電線は、DJIの機体などに搭載されているマグネティックフィールドセンサーに大きな影響を与えます。つまり、機首方向を見失う可能性があり、それは、Fly a wayや 墜落に直接結びつく原因となります。